Soapbox: Ethics、それが私たちの原動力

エシックス・ディレクター、ヒラリーが語るラッシュ・エシカルキャンペーンの原点

環境、人、動物を守ること、それはラッシュの信念です。私たちは創立当時から環境保護、動物の権利擁護、人権擁護・人道支援などに対してさまざまなエシカル(ethical:倫理的な)キャンペーンやチャリティ活動を行ってきました。今までも、これからもEthicsこそラッシュの原動力です。

-あなたがエシックス・ディレクターになった経緯を教えてください。
 ラッシュに入社する前は、社会活動家だったんです。他にも、ボランティア団体で、怪我をした野生動物や、交通事故に遭った動物のためのレスキュー車の運転手もしていました。でも、生活のためには収入を得る必要がありますからね。私自身、ラッシュが動物実験に反対していることも、実際に動物実験を行っていないことも知っていましたから、ものは試しに面接を受けてみたんです。急な呼び出しが来ても対応できるよう、ラッシュのオフィス正面玄関の前にレスキュー車を停めて、しかもレスキュー隊のユニフォームを着たまま! かなり常識外れな面接だったので絶対落ちたと思ったけど、ラッシュは気にせず採用してくれました。入社当初は、ソープルームに配属されたんですけど、その後、いろいろな部署に異動になりました。配送部門で働いていた時なんて、フォークリフトも運転していましたよ。ラッシュが成長するにつれて、私も少しずつ自分のパーソナリティや目標に見合った肩書をもらえるようになりました。

-あなたはラッシュのエシックス・ディレクターですが、ラッシュでは自分たちを「エシカル・カンパニー」と呼びたがらないのはなぜですか?
 創立以来、ラッシュは企業として成長し続けて今の地位を確立しました。そのおかげで、より良い社会を作るために、時間や資金を投じ、力を尽くすだけの余裕ができてきました。ラッシュには理想とする「パーフェクト・カンパニー」としてのヴィジョンがあるのですが、残念ながら、まだまだ道半ばですね。だから、まだ自分たちのことを「エシカル・カンパニー」とは呼べないのです。

-ラッシュはさまざまなエシカル・キャンペーンやチャリティを行っていますが、サポートするグループやテーマを選ぶ際、あなたの意見はどれぐらい反映されるのですか?
 規模は小さいのですが、ラッシュにはキャンペーン担当が何人かいて、それぞれ独自のテーマを扱っています。ラッシュの創立者やスタッフがアイディアを思いつく時もあれば、外部のキャンペーングループやチャリティ団体が計画の要請に訪ねてくる場合もあります。

 どのキャンペーンを実施するとしても、必ずその分野のエキスパートと組むようにしています。彼らに店頭スペースを貸し出して、1 ~ 2 週間ほど好きに使ってもらいます。そうすることによって、ショップの前を通りかかる人や来店されたお客様に、彼らのメッセージを直接伝えることができるのです。

 まだ表立って取り沙汰されていないけど、活動家たちが多くの人に知ってもらいたいと頑張っている。そんなテーマを私たちは探しています。そのいい例が「キツネ狩り」。イギリス国民は、キツネ狩りを嫌悪しています。でも、2004 年にキツネ狩り禁止法が成立されたにもかかわらず、残念ながら未だにキツネ狩りが行われているのです。イギリス国民が知ったらひどく悲しむでしょうね。他にも、カナダには「タールサンド(油砂)」の問題があります。私たちの目の届かない原野では、この原油を採掘するために恐ろしい環境破壊が行われていて、私たちは知らず知らずにその原油から精製されたガソリンを買っているのです。カナダの森林が破壊されていく光景を目の当たりにしたら、みんなそのガソリンを給油しようとはきっと思わないでしょう。

-化粧品のための動物実験廃止は、ラッシュ創立時からの最優先課題です。なぜ動物実験廃止はラッシュにとって重要なのでしょうか?
 化粧品のための動物実験の廃止は私たちの信念なのです。私たちは動物実験の現場を実際に見てきて、それがどんなに残酷で、まったく不必要なことであるか、よく知っています。動物実験から得られるデータの信ぴょう性はとても低いのです。2012 年に私たちは「Lush Prize(ラッシュプライズ)」を立ち上げました。これは、動物実験をなくすための画期的な方法や代替法の研究をしている団体や個人の科学者を毎年表彰するもので、総額25 万ポンド(約4,300 万円)の基金です。

 2007年、ヨーロッパでは、EU 圏における化学物質に関する規制「REACH (リーチ)」が施行されました。「REACH」では、動物実験の減少を推奨してはいるのですが、特定の化粧品原材料については引き続き動物実験を義務付けています。これからは今まで以上に、これらの動物実験に代わる手法への資金提供が必要となってくるでしょうね。科学も時代の要請に応えて、動物実験の必要性自体をなくしていかないといけないと思います。

-ラッシュは自らの信念について積極的に訴えかけていますが、あなたの以前の活動は、けっこう過激でしたよね。ラッシュの一員となった今でも、以前と同じような活動を続けることができると思いますか?
 「過激」の定義は人によって違うと思いますけど。今の私はラッシュの一員として、違った形で影響を及ぼすことができています。以前、私が関わっていた抗議活動の大半は、私が個人的に「そうであってはいけない」と考えている問題の前線に身を投じることでした。例えば、自分を手錠でブルドーザーにつなぐとか、木の上に居座るとか、生体実験を行う研究室の門を封鎖して妨害するとか、ミサイルを運ぶトラックの前に身を横たえるとか…。自分の身の安全なんて考えないで、からだを張って抗議してましたね。「私はここにいて、これに反対しています」って。でもラッシュでは、全然違うアプローチができると分かったのです。ラッシュのショップって、世界中の人通りが多い繁華街に何百とあるでしょ。これって、お金では絶対買えない、最高の広告スペースですよね。だったら、私たちが問題視している事柄をアピールするのにそれを使わない手はない。これは以前の私では手に入れることができなかった、最高のキャンペーンツール。提携しているチャリティ団体も、そう言ってくれます。

-ラッシュが行ったキャンペーンの中で、お気に入りはありますか?
 世界中で動物愛護活動を行っているヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルが地球規模で行った動物実験反対キャンペーンには、感動しました。昨年、私たちは何度も一緒に活動しましたが、彼らの動物実験撤廃に対するグローバルなアプローチは素晴らしい。たとえヨーロッパで動物実験を撤廃できたとしても、他の巨大な新興市場でこの問題が解決できなかったら、あまり意味がありませんからね。他にも、今年、人権団体「Reprieve」と再び提携できたことも嬉しかったですね。彼らは生死に関わる深刻なテーマを扱っているけど、いつもユーモアと温かみを持ち続けていますから。

-お客様もラッシュの活動をサポートすることができるのですか?
 もちろんです。まずは、ラッシュがサポートするキャンペーングループやチャリティ団体のホームページをチェックしてみてください。世界中には志の高い人たちがたくさんいて、素晴らしい活動を展開しています。そして一人でも多くの皆さんにメッセージを届けたいと願っているのです。イギリスでは、ラッシュは本当に恵まれたポジションにいます。だからこそ、企業としても個人としても、助けを必要としている団体に手を差し伸べる義務があると考えています。ラッシュの活動、そして世界中で起きている課題に関心を持ってくださるお客様がこんなにたくさんいるなんて、なんて素晴らしいことなんだろうと感謝の気持ちでいっぱいです。

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