Gorilla Perfumeの世界:Volume IV

アートはこの世界で唯一、真剣なもの。そしてアーティストというのは唯一、決して真剣にならない生き物。ーオスカー・ワイルド

大概のアート、例えば水彩で描かれた海の風景のように、見るからに美しい作品はそれだけで充分です。でも、中には違った方法で、美しさを表現するアートも存在します。ピカソの抽象画のように、隠された意図やその絵が語るストーリーを介して美しさを表現するのです。そう、異端や未知、不快なものを混ぜながら。時にアートは不格好なのです。

まるで写真家や作曲家、肖像画家や音楽家がそれぞれの手段でアートを創り出すように、調香師も香りという手段でアートを創り出します。

ゴリラパフュームはただの香水ではありません。インスピレーション、ストーリー、調香師の経験の結集なのです。そしてそれは、Volume IVと同じでありながら、どこか違っているのです。

ハルは誰?

ハル・サンプルズはダラス出身の写真家でありアーティストです。彼の視線は、しばしばホームレスや社会から忘れ去られた魂に向けられています。

ハルは、貯水タンクに住んでいたホームレス俳優のタチョワ・コヴィントンとの作品でよく知られています。あの、有名なストリートアーティストであるバンクシーが、偶然にもペイントをし、高値で売却されることとなった貯水タンクのもとの住人の話です。

でも、ごれがパフュームとどんな関係があるのでしょう?

ラッシュの調香師、サイモン・コンスタンティンとハル・サンプルズが初めて出会ったのは、エディンバラのGorilla Perfumeのポップアップストア。ハルが自分の紆余曲折の人生とアートの冒険について語り始め、2人は長らく話し込んだのです。

興味をそそられ、インスピレーションを感じたサイモンは、ハルのストーリーを聞きだし、彼の事をもっと知るためにさらなる時間を設けました。二人でダラスへ行き、実際にストーリーに登場した場所を訪れ、ハルの家族や友人に会いました。

友好関係が深まるにつれ、互いのインスピレーションはついにコラボレーションへと繋がりました。サイモンはハルの人生にインスピレーションを受けたパフュームを作り始め、それが発展しVolume IVになったのです。

ここから先を読み進めれば、ハルの事をもう少し知ることができるでしょう。いかにして、パフュームと現実世界の瞬間とが混ざり合い、アートが生まれるのかを感じられるかもしれません。

■BLACKCURRANT ANGEL (Gorilla Gallery限定/日本未発売)

ハルは、ダラスのホームレスコミュニティと長い時間を共に過ごしました。路上で会った人々を撮影し、出来たものを本人たちに見せてまわりました。

ホームレスの人々の多くは、たくさんの人が知るべき賢明な言葉や人生の教訓を持っていました。しかし、ほとんどの人は彼らの存在に目もくれず通り過ぎてゆくのです。ハルは、自分がそんな友人たちを目に見える存在にしているように感じました。

ハルはその記録の数々を、“堕天使からのメッセージ”として作ったと話します。天使たちには、ようやく素晴らしい巡り合わせがきたと思った頃に、また天に召されてしまうということがしばしば起こりました。

このように友人を失うことに、ハルは心を痛めました。

『ブラックカラントエンジェル』には、焦げた木材パレットとガソリンの間から香るような、ピリッと魅力的なノートを含みます。

■TANK BATTLE ...タチョワ vs バンクシー

友人の死はハルに大きな打撃を与えました。その気分を変えるため、友人のディランがハルをLAに連れて行きました。バス停に着いた途端、変わった風貌の男が二人に近づいてきました。初めて会ったにもかかわらず、その人はハルに近づきこう言ったのです。

「あんたが俺の映画を撮る夢を見た」

彼の名はタチョワ・コヴィントン。ディランとハルを自宅に招いてくれました。そこは放棄された貯水タンクで、彼は自分で中をきれいにし、立派な家(うち)に作り変えていたのです。床、椅子、アート作品の飾りや発電機まで設置していました。

貯水タンクの中はタチョワの芸術観と個性にあふれていました。それはまさに古いタンクの中に隠れた、素晴らしいアートギャラリーでした。

ハルとディランは魅了され、タチョワを撮り始めました。彼と3年を過ごし、彼のアートやフィロソフィー、彼の人生について、ドキュメンタリーを撮っていったのです。

しかし、映像がほぼ完成しかけた時になってハルに一本の電話がかかってきました…

「俺のタンクに誰かペイントしやがった…イングランドの若者で、バンクシーっていうらしい!」

‘THIS LOOKS A BIT LIKE AN ELEPHANT(ちょっと象みたいに見えるよね)’という言葉がタンクを飾り、その下ほ高速道路を走る誰もから見えるようになっていました。

この言葉によってタチョワは家を失う事になったのです。バンクシーの新作の写真は世界中に拡散されました。 都合の良い人間たちが、バンクシーの原作を手に入れるチャンスだと気づき、すぐに買収にかかりました。タンクは彼を蚊帳の外にして売却され、タチョワは突然退去させられたのです。

『タンクバトル』の香りでは、ほとばしるスプレーペイントが、さび付いた貯水タンクのかび臭く湿った内装と激しくぶつかりあっています。

■RENTLESS ...「ホームレスだったことは無い」

タチョワは「何も無いところから何かを生み出す」魂を体現しています。タンクの中に彼が作った自分の家の全ては、外で見つけた宝物やギフトです。自分の住むスペースを美しくするのに、彼は集めたものを使いました。彼は、他人が捨てたものをアートへとアップサイクルさせる才能に長けていました。サーフボードを切り分けて棚にしたり、シーリングに壊れたCDでモザイクを作ったり。バンクシーがその貯水タンクをアート作品にする前から、それはアート作品だったのです。

■SWEET GRANDMA and MODEL (Gorilla Gallery限定/日本未発売)

この2つの香りは、ハルの母方のグラマラスな祖母、マリー・エレンのもつ2つの顔にインスピレーションを受けました。

それぞれが、彼女の人生の違った時を切り取った香りとなっています。

ハルの子ども時代にはトラブルが多く、数々のトラウマがあります。マリー・エレンはそんな状況から彼を救い、安全な場所へ連れだしました。祖母と一緒の時間は楽しさと喜びで満ちていました。彼らはダラスのクラブで行われたダンスコンテストに出場し優勝。そして彼女はハルに、彼女と一緒にすごした時間をドキュメンタリーにするのを許しました。

若かりし頃のマリー・エレンは雑誌Vogueに登場するモデルでした。彼女はハルに輝かしいキャリアの写真を見せながら、モデル時代を振り返りました。

ハルが年を重ねても、マリー・エレンは彼がどこか居場所が必要なときは、ソファを貸してあげました。この香りは、美しい二面性をもったパーソナリティへの愛を捧げています。

■WHAT WOULD LOVE DO

ハルがエジンバラのスパを訪れたとき、スパセラピストのジェニンに会いました。

彼女はある“知恵”をハルと、そして後にサイモンと共有しました。何か難しい問題や疑問に直面した時、「What would love do?」とただ自分に問うこと。その言葉は頭から振り落とせないほど、印象的でした。

サイモンは、新しい香水にどのエッセンシャルオイルを使うか決めるか考えてながら、それを決めるのはそよ風くらいに簡単に感じられました。

■IAMESH (Gorilla Gallery限定/日本未発売)

たくさんのホームレスの友人を亡くした後、彼は怒りに満ちていました。彼の中でその怒りが爆発し、彼自身がその身をボロボロにしていたと気が付いたのです。

病院で、炎症を起こしたヘルニアを治すために手術用のメッシュが入れられました。でもそれは彼の体内で移動し、大腿動脈にまとわりつき、痛烈な痛みと健康問題を引き起こしていたのです。体の奥深くで絡まっていて、病院側は彼を助けることを拒みました。それを摘出する手術は、複雑で危険なものになると予想されたのです。

最終的に、ハルはそれを摘出することが出来る心優しい外科医を見つけました。でも、残されたメッシュはさらに重大な問題を引き起こしていました。オペの終盤、くっついたハルの神経も一緒に取り出されてしまいした。そうして彼の体に、何の感覚もない大きな部分だけが残ったのです。それでも、数年間で完全に痛みから解き放たれた瞬間でもありました。

手術の翌朝、この上ない気分で目覚めました。彼のベッドから新しい人生へと踏み出し、何かインスピレーショナルな感覚を得ました。

それはまるで、放射性のあるクモがピーター・パーカーをスパイダーマンに変えたように、そのメッシュの摘出が、ハルに特別な力と抑えきれないエネルギーを与え、ハルをImesh(アイメッシュ)に変えました。アイメッシュフレグランスはメッシュとFlesh(フレッシュ=人体の肉)の融合を表しています。血とメタルが重い内臓の脈の中で混ざり合うのです。

サイモン・コンスタンティンであること

ハルと仕事をし旅をしながら、サイモンは数知れない経験と彼の心の琴線に触れ、彼をインスパイアする感覚を得ました。サイモンは、それを香りで表現しましたが、裏に隠れたストーリーをこちらで読んでいただくこともできます。

■THE SECRET GARDEN (Gorilla Gallery限定/日本未発売)

前向きなガーデナーとして、サイモンはよく植物や花を、パーマカルチャーの考え方に沿って、完璧に育てることを思い描きます。何度かそれに失敗し、このゴージャスなフレグランスを作る方がよっぽど簡単だと気が付くのです。

それは、彼の想像の中にある秘密の庭園の匂いを捉え、パーマカルチャーのすべてをサイモンに教えてくれた古い友人の面影を写します。

モクセイとイモーテルの終わりなき香りが、外気と新緑の香り、肥沃な自然を思わせます。

■ROAD FROM DAMASCUS (Gorilla Gallery限定)

レバノンへの旅路でチェックポイントを通過した時、サイモン達は同じ道を戻れない可能性があると警告をされました。シリアでの戦争が始まって以来、レバノンは100万人もの難民を受け入れていました。

サイモンにとって、武装警備されたチェックポイントを目の当たりにし、難民達に彼らの安全地帯へのフライトについて話すことはあまりに衝撃的で、“どれほど世界が変わってしまったのか”という現実を、家まで持ち帰ることとなりました。彼はこの香水の香りにビターオレンジとダマスクバラを選びました。

■MANOUCHE ZATAAR (Gorilla Gallery限定/日本未発売)

レバノン人の伝統的な朝食「Manouche Zataar」は、胡麻やタイム、ワイルドセージやウルシなどの様々なハーブをふりかけたフラットな平たい形状のパンです。旅の途中何度もサイモンに提供された、食欲をそそるそのプレートにインスパイアされ、この香りを創り出しました。

■CARDAMOM COFFEE

難民キャンプへの旅の途中、サイモンは出会った人々の素晴らしいホスピタリティを目の当たりにしました。祖国を逃れ多くを失いながら、それでも彼らは親切な気持ちをもち、もてなしてくれているということに、心を打たれました。

彼の訪問中、熱々のカルダモンコーヒーが出されました。豊かなアロマが彼の手と、心を温めました。ラボに戻った時、そのスパイシーな香りをそこで再現したのです。

■I’M HOME

地球の裏側、遠く離れた街角での冒険が、どんなにエキサイティングだとしても、自分の家について、正面玄関の鍵を差し込む瞬間というのは格別なもの。

優しく心地よく、おいしそうな匂いがおかえりの抱擁へと導きます。家族との団欒へと戻ること、ソファのお気に入りの場所、自分のふとんに包まれて眠ること、すべてが愛おしいのです。

■AMELIE MAE

サイモンの長女、イモージェン ローズこそ、彼女の名前を冠したパフュームのインスピレーションの源。しっかり者の長女として、彼女は父にこんなアドバイスをしました。「お父さん、Amelieのためにもつくったほうがいいわよ。Amelie だって有名人になりたいんだから!」

Amelie は自分の香水をどんな香りにして欲しいか尋ねられ、心を弾ませました。彼女の注文は、ラズベリー、ローズ、ラベンダー、そして花々の香り。

お父さんは再び”素敵なお父さん”となり、私たちはこの美しい香りのブレンドを楽しむことができるというわけです。

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