FAQ : ラッシュとパーム油の関係

ラッシュの、サプライチェーンからパーム油を除くための、長い道のりのお話。私たちがどこから始め、何を目の当たりにしたのか、そしてスマトラ島のプランテーションを原生林へと戻すために取り組んできたことについてお伝えします。

<Q.パーム油とは?>

アブラヤシにはギニアアブラヤシ、アブラヤシの2種類があります。パーム油はヤシの木から採れるこの2種類のオイルを指す一般的な名称で、木から生る果実と果実の種からとれるパーム核油からもパーム油がとれます。パーム油は、果実を潰し、抽出して生成されます。アブラヤシの木は、熱帯林にしか育たない木ですが、西アフリカと北アメリカを原産とする木です。

粗パーム油(CPO)は主に食品産業に使われていて、ソープの製造にも使用されます。パーム核油(CPKO)は油脂化学製造業が、脂肪アルコールや脂肪酸を生産する際に多く使用されており、界面活性剤製造に使用される化合物の原材料となる素材としての役割もあります。

アブラヤシは有能な植物で、大豆、菜種、ひまわりよりも1ヘクタール当たり約10倍の量のオイルを産出します。このような特性から、パーム油は最も経済的な材料となり、バイオ燃料を含む多目的な原材料として使われています。パーム油は、世界で一番多く生産している2カ国、マレーシアとインドネシアの経済成長にもつながっています。しかし、最近はパーム油の需要が急速に増えたために、重大な問題も浮かび上がっています。

以下は、環境保護団体が2000年代半ばからキャンペーンを打ち出したパーム油に起因する問題です。パーム油産業が引き起こす環境劣化問題に直面し、ラッシュはパーム油をサプライチェーンから完全に排除すべく、取り組み始めました。

<Q.アブラヤシの栽培で起きる重大な問題とは?>

注釈:アブラヤシの栽培のすべてが悪いということではありません。中にはアブラヤシの優れた栽培法もあります。しかしここ近年、パーム油産業が急速に拡大したことが、今の問題につながった大きな要因となっています。

  • アブラヤシの単一栽培が、森林の多様性の破壊につながり、結果的に生態系、動物の生息環境に影響しています。
  • 企業によるアブラヤシ栽培のためのプランテーション開発により、先住民の土地が奪われています。
  • 土地の奪い合いにより、人権の侵害、対立が生まれています。
  • アブラヤシのプランテーションでの仕事は、不安定で、低賃金、そして危険が伴う仕事で、児童労働が行われてる場合もあります。
  • アブラヤシのプランテーションが使用する違法・合法の化学薬品は土地と水源の汚染に繋がっています。
  • 賄賂と買収が農園を拡大するために横行しています。
<Q.サステナブルなパーム油?>

企業がRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認定のあるサステナブルなパーム油を採用する動きがありますが、この円卓会議と認証評価基準に問題があると考えられます。

  • RSPOは産業によって独占されています。2009年には、RSPOのメンバーの内、保護団体や『社会的発展』を目指すグループの参加は全体の6.7%しかありませんでした。残りは、すべて産業部門からの参加でした。
  • RSPOは、森林泥炭の破壊を完全禁止する動きはとっていません。(二酸化炭素吸収に重要な役割)
  • パーム油の生産者、製造者は、彼らの事業が認証を受けていなくてもRSPOの一員になることができます。
  • パーム油の需要拡大が気候変動に及ぼす影響は、RSPOが公言しているよりも甚大です。
  • 世界市場の中で、認証されたパーム油を求める声は少なく、パーム油の全生産量の内の14%しかRSPO認証を受けていません。認証パーム油は非認証パーム油と比べると8-15%価格が高いということもあります。中国とインドはパーム油を消費する国ですが、価格の高い認証パーム油に切り替えることへの興味は希薄です。
<ラッシュのパーム油に関するポリシー>

2008年より、ラッシュはサプライチェーンからパーム油を取り除く取り組みを始めました。同時に、パーム油の栽培が原因で環境の劣化問題がある現状をお客様に伝え、“パーム油から手を洗って”と訴えるキャンペーンを実施してきました。

世界市場の中で、認証されたパーム油を求める声は少なく、パーム油の全生産量の内の14%しかRSPO認証を受けていません。認証パーム油は非認証パーム油と比べるそれ以降、ラッシュは、スタッフやお客様に対して、パーム油を取り除く過程を透明性を持って説明しています。石ケン素地に、パーム油をしていないという事実を様々な場所で発信してきましたが、原材料に使用している安全性が確認された合成物質には、パーム油の派生物が含まれています。現在はすべての原材料をあらためて見直し、パーム油不使用の原材料調達や、必要に応じて原材料を再改良することを考えています。この動きはまだ途上にあり、完成商品の品質を保ちながらたくさんの再改良を行われなければいけないため、時間がかかる道のりでもあります。

<Q.ラッシュのソープはパーム油不使用?>

不使用ではありません。石ケン素地は、すべてパーム油不使用と自信を持って言えますが、ソープが完全にパーム不使用だとは断言できません。ステアリン酸ナトリウムにパーム油が含まれていることが多いためです。現在は、サプライヤーと商品開発者と協力しながら、ラッシュの全商品で使用できる、パーム油を使わないステアリン酸ナトリウムを模索しています。

<Q.どの原材料がパーム油の派生物を含んでいる?>

材料(以下派生物を含む)

  • ラウリルベタイン(アブラヤシの種、パーム、ココナツ)
  • ココアンホ酢酸Na(アブラヤシの種、パーム、ココナツ)
  • セテアリルアルコール(アブラヤシの種)
  • セテアリルアルコール、ラウリル硫酸Na(パーム油)
  • ラウロイルサルコシンNa(ココナツ、パーム、アブラヤシの種)
  • ラウロイルサルコシン(ココナツ、アブラヤシの種)
  • セテアリン酸グリコール(パーム油)
  • ステアリン酸PEG-100(パーム油)
  • スルホコハク酸ラウレス2Na(パーム油)
  • ステアリン酸PEG-100(アブラヤシの種 )
  • ラウレス硫酸アンモニウム(アブラヤシの種 )
  • ラウレス硫酸Na(アブラヤシの種 )
  • ラウリル硫酸Na(アブラヤシの種 )
  • ステアリン酸Na(パーム油)
  • ステアリン酸(パーム油)
  • ラウレス-4(パーム油 )
  • (カプリル酸/カプリン酸)PEG-6グリセリズ、PEG-60アーモンド脂肪酸グリセリル(パーム、アブラヤシの種)
  • ポリソルベート20(アブラヤシの種、パーム)

これまでの道のり

2006年 パーム油について知る

シンガポールとインドネシアへの視察で、ベジタリアンソープの原材料として欠かせないパーム油が、スマトラ島とボルネオ島で前例のない森林破壊を引き起こし、オランウータンや象、トラをはじめとする絶滅危惧種の貴重な生息域を破壊していることがわかりました。ラッシュのヘッドバイヤー、サイモン・コンスタンティンは、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)がシンガポールで開催された会議に参加していました。特にパーム油産業がバイオ燃料利用に向かって急速に広がる瀬戸際だったこともあり、“サステナブルな選択肢”が問題解決に繋がらないことは明らかでした。

2006年 スマトラ島訪問

RSPO会議参加後、サイモンはイギリスを拠点とする森林保護団体であるSumatran Orangutan Society (SOS)と、彼らのパートナー団体であるOrangutan Information Center (OIC)の協力を得て更なる調査に乗り出しました。彼らはオランウータンの生息地破壊、アブラヤシの単一栽培による不毛地帯、豊かな森林が広がるグヌンレウサル 国立公園を目にしました。彼らは2004年に発生した巨大津波の影響、バンダ・アチェのプロジェクトを終えた国際支援コミュニティからの寄付金の不正利用を知りました。

2007年 新しい時代の到来

サステナブルで透明性のあるパーム油の調達を実現するのは不可能に近いと感じたラッシュは、イノベーションが答えであると感じていました。はじめに、石ケン素地のサプライヤーにアプローチしましたが、どのサプライヤーからもパーム油の代用品を探すことは不可能だろうと伝えられました。次に、イギリス国内で石ケン素地の開発者がいることを知り、パーム油を石ケン素地から完全に取り除き、悪影響の少ない菜種やキャノーラ油、ひまわり油、ココナツオイルを代用することに合意してくれました。2007年後半、最初の試作品がイギリスのラッシュの製造拠点で製造されました。

2007年 現状を伝える

ラッシュの決断と取り組みが及ぼす影響、そしてお客様に現状を伝えるため、イギリスの店舗で問題を伝えやすくするための取り組みとして『グリーンウォッシュ』ソープを発売しました。(※日本未発売)

2008年 リコール問題

しかし、すべてが思い通りには行きませんでした。石ケン素地の変更によってお客様からご意見を受けることが多くなりました。イギリス国内で販売していたこの石ケン素地を使用したソープは、泡立ちが悪く、香りもなくなった、商品に斑点が現れ、変形しやすくなったなどの声が主なものでした。お客様が満足できる商品を提供できていないという状況に対し、イギリス国内で該当商品をリコールしました。(※)この問題が噴出した時、以前のサプライヤーがパーム油を取り除いた新しい素地を使ってみないかと声をかけてくれました。ココナツと菜種しか使われていないシンプルなものでしたが、相性は抜群で、すぐに新しい商品を店内に供給することができました。

※同石ケン素地を使用したソープは、日本未発売。

2008年 クブ族

パーム油の問題にずっと取り組み続けていた、エッセンシャルオイルのバイヤーであるアグネス、そしてキャンペーンチームが、再度スマトラ島に旅立ちました。今回は、パーム油産業の企業が土地の奪い合いをした事で、先住民が居場所をなくしたことについて調査するための旅でした。パーム油問題が起きる前は自然な姿の森林の中で遊牧して暮らす、先住民族であるクブ族と時間を過ごす貴重な機会を得られました。

2009年 “パーム油から手を洗って”

サプライチェーンからパーム油を取り除く活動をし続けながら、同時にパーム油問題に焦点を当てたキャンペーンを世界中のラッシュで行うことにしました。お客様は、ラッシュの店舗にグリーンの手形をつけて、キャンペーンのソープを購入することができました。売上げが、インドネシアのパーム油企業と戦うレインフォレスト・アクション・ネットワークに寄付されました。日本国内では、同様のキャンペーンを2010年に実施、キャンペーンソープ『ジャングルソープ』の売上げをパームプランテーション問題に取り組む『FoE Japan』に寄付しました。

2010年 戦いはまだまだ続く

「パーム油問題」に対する社会の関心を高めることに注力し、世界中の店舗を使ったキャンペーンを続けました。同時に、この動きの裏では、パーム油由来のグリセリンを商品から取り除き、遺伝子組み換えでない菜種油を利用した原材料へと取り替えました。

スコットランドで発行されている新聞「スコッツマン」より(2009年):

「ラッシュ、危険にさらされているジャングルの部族をサポート」

化粧品業界をリードするラッシュが、“署名運動”をプリンセスストリート店のショップウィンドウで実施し、危険にさらされているジャングルに暮らす部族の現状を伝えています。

このキャンペーンは、インドネシアのクブ族が直面している危険な状況に光をあてることが目的で、彼らの住処となっているジャングルがアブラヤシプランテーションのために伐採されているとラッシュは訴えます。集めた署名は、グリーンピースと共同で行われており、パーム油と紙の会社として知られるシナール・マス社に提出されます。ラッシュのキャンペーンマネージャーを担当するアンドリュー・バトラーは「昨年はクブ族の人たちと話しながら、スマトラ島の森林で一緒に時間を共にしました。彼らは自分の家がパームプランテーションのために破壊されている様を目にしてきたのです。」

「彼らは、英国の人々の助けを必要としています。彼らの家を救い、文化を守ってほしいと考えています。私たちにはシナール・マス社のような紙とパーム油の生産のためだけに森林を伐採している企業を止める責任があるのです。」

グリーンピースの森林キャンペーン担当のイアン・ダッフは「シナール・マス社が森林と泥炭地を一掃し、新しいパーム油農園のために、空気中に数千トンもの温室ガスを放出しています。」と話します。「シナール・マス社はラッシュの声、そしてお客様の声に耳を傾けるべきで、パーム油をとるための森林、泥炭地破壊をやめるべきです。」

2010年 キッチンで働くヘストン

パーム油を取り除くのは、このお話のたった一部です。ソープの製造において、原材料が地球にどんな影響を与えているかを100%把握するため、すべての工程に透明性を持たせる必要があると学びました。ガーナ・パーマカルチャー・インスティテュートのディレクターを務めるポール・イエボアを訪ねたとき、彼が運営するソープ製造企業を見て受けたインスピレーションをもとに、ラッシュオリジナルの石ケン素地をつくることが必要だと感じました。そこでサイモン、ラッシュの商品開発者であるウェズリー、そのほかのメンバーがはゴーグルを装着し、フレッシュハンドメイドソープの試作が始まりました。

2012年 時間がかかりました

ソープ作りへの理解を深めるために2年という時間を要しました。試作品はなかなか成功せず、商品開発者がソープ作りの新たな手法を生むのは大変な作業だということが証明されました。しかし、ロックを愛する、若さとエネルギーに満ちたダン・キャンベルという生化学者は、熱心にまた試作を繰り返していきました。

2014年 モービスのために道を空けて

ダンと開発チームは、新しい石ケン素地の開発に集中し、結果的にヒマシ油、ココナツ、小麦胚芽オイルのミックスに成功しました。この調合は、お母さんのつくるパンをイメージした、モービスソープに使われ、2014年にできあがりました。

2014年 スマトラ島でのリジェネレーション(再生)

SOS、OICとコラボレーションし、8年間にも及んだパーム油の戦いを経て、新しい取り組みに挑戦するときが来たのでは、と考えました。サステナブルな「スラッシュ・ファンド」(SLush Fund)のイニシアチブを通してOICと協力しながら、スマトラ島で新しい作物を栽培する方法を開発しようと考えました。貴重な森林の保護区で、自然農法で栽培する手法や農業を模索しながら、より良い技術を導入するため、OICは10ヘクタールもの土地を購入しました。この土地は、パチョリ、レモングラス、アガーウッドなどのエッセンシャルオイルを産出する植物が育つ地域でもあったのです。

2015年 グルメソープ

続いて、ダン、ウェズリー、サイモンがタッグを組み、ロンドンのオックスフォードストリート店のオープンにあわせ、新しいソープカテゴリーを2種類開発しました。それがグルメソープで、スラッシュ・ファンドプロジェクトの世界中からの原材料をブレンドした、優れたハンドメイドソープでした。リジェネレーション(再生)を大切にするパレスチナ、コロンビア、ガーナ、ケニアなどで採れたオイルを使用しました。ウェズリーは、この新しい石ケン素地をコールドプレスソープに使い、硬くて長く使えるソープが誕生しました。

2017 ラッシュの取り組みはまだ続く

私たちは引き続きパーム油を含まない原材料の調達に取り組んでいますが、難しい作業であることは否めません。調達元の原材料が100%パーム油不使用だと確認しながらも、ラッシュのエシカルで、動物実験をしていないというポリシーをクリアしなければいけないためです。このような原材料の代用品でパーム油を含むものは、市場に出回ったばかりのものであるため、動物実験が行われているケースが多く、すなわちラッシュには相応しくない原材料となってしまいます。私たちが使用している原材料の多くはパーム油不使用の代用品が少なく、シンプルに原材料を入れ替えるだけではなく、フォーミュラの改良もしなくてはなりません。パーム油の使用を完全に止めるため、日ごろから調査研究を行っています。お客様にはこれからも私たちの取り組みをお伝えし続けます。

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